どうすれば音楽を語れるようになるのか 音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書) 感想及びまとめ
・音楽と言語
P87「音楽は決して単なるサウンドではなく、言葉と同じように文節構造や文法のロジックや意味内容を持った一つの言葉でもある。」
P98「言葉と音楽の文節規則(リズム)は深く関連し合っていて、背景になっている言語を知らないと音楽もまたよくわからないといった事がしばしば起こる。」
・「家具の音楽」の誕生
P127 十九世紀ドイツのロマン派は、交響曲や楽劇を宗教儀礼に聖化する傾向があり、それに対し近代フランスではドイツ音楽への反動として音楽によって音楽以上の何か形而上学的なものを表現することに対して批判的な思想が生まれてくる。
サティはベートーヴェン以後の「理念を語る音楽」との対比で、「家具の音楽」(「生活の中に溶け込む音楽」)ということを言った。「家具の音楽」は、人々の日常の中でただ存在している音楽、声高に演説しない音楽、環境としての音楽であった。
アンビエント音楽はこの「家具の音楽」というコンセプトに大きな影響を受けている。
・五線譜と「こぶし」
P138 五線譜の中ではその目盛上に正確に記す事が出来る楽音(いわゆるドレミファの音階上の音)のみが用いられ、それ以外のノイズは排除される。また、数値化が難しい「こぶし」などのような揺れは原則として取り除かれる。つまり音楽をいわば身体から引き剝がし客観化するわけである。
・「わざ言語」と「音楽の聴き方」
音楽において「わざ言語(身体感覚に関わる独特の比喩)」がどのように使われているのか知る為に指揮者の言葉を聞いてみようという記述があったが、これは好きなアーティストがインタビューを受けている動画や記事を見る事に置き換える事ができそうだと思った。
また、P236の「ある音楽ジャンルが「分かる」とは、一つの文化に参入し、その暗黙のアーカイヴに対する土地勘のようなものを会得することだ。歴史を知り、価値体系とそのメカニズムと含蓄を理解し、語彙を習得すること、端的に言って「音楽の聴き方が分かる」とは、そういうことだろう。」という記述は特に覚えておきたい。
・音楽を語るには
この本の中で、音楽を語る為にはまず自分が音楽をやってみるべきだと書いてあった。個人的に、曲における技術や音の良さを言語化する事は音楽の経験が無いと難しいように感じる。できる限りはやってみたいと思うが、厳しいな(音楽の経験の必要性を感じた)と思ったらそこはスパッと諦めるようにしたい。