NHK「100分de名著」ブックス 般若心経 感想及びまとめ
般若心経の意義
こういった厚みのある文化的背景の中に、「般若心経」は存在している。「般若心経」には、仏教という東アジア全域にわたる巨大な知的活動の活力が吹き込まれているのである。
ゆっくり読んでも5分足らずで終わってしまう「般若心経」だが、そこに内在する「文化的質量」を理解したうえで声に出せば、また今までとは違った響きが聞こえてくるだろう。
般若心経の考え
釈迦の仏教が提示した五蘊(ごうん:「われわれ人間はどのようなものからできていて、どのようなありかたをしているのか」ということを釈迦が分析し、独自の思想から五つの要素に分けて把握したもの)を、「般若心経」は「そのような五蘊は全部錯覚だ、実体のないものだ」と主張した。
それが、「照見五蘊皆空(しょうけんごうんかいくう:五蘊があり、そしてそれらの本質が空であると見た)」という言葉の意味である。そして、錯覚であると悟ったからこそ、この世の一切の苦しみや憂いから解放されたというのである。
「釈迦の仏教」で、修行者がいくら頑張ってもブッダになれないのは、誓いを立てるべきブッダに会えないからである。この問題を解決するために大乗仏教では、「この世は一つではない」というアイデアを生み出した。
すなわち、パラレルワールドのように並行する世界が無数にあって、そのそれぞれにブッダがいると想定したのである。大乗仏教の創始者たちは、できるだけ多くの人が自分たちに帰依(きえ)してくれるように、どんな人でも簡単にブッダを目指すことのできる道を様々に考案した。
このあたりのアイデアはじつに発想豊かでユニークである。