セックス依存症になりました。<合本版> 感想及びまとめ
EMDR(トラウマ治療)、加害者臨床、性嫌悪と性依存など
性依存者の多くは、幼少期から厳しい環境にいた人間が多い。苦しい体験をしている時に、性に関する体験(セックスや自慰行為など)を自分の拠り所としてそれを凌いでいると、自分の身体にとっての性の重要度が上がり、性依存症になりやすくなる。
また、性嫌悪の強い環境にいた人間ほど、性依存になりやすい。回復のためには、信仰(宗教も含めた心の拠り所となるもの)や、他人との繋がりが有効。
「性欲は満たさないといけない」という思い込みが破滅に繋がることもある。
一途で真面目な性格の作者が、結婚を考えていた彼女に「遊び人の先輩を好きになった」という理由でフラれてから、性に奔放な人間達に出会ってしまい、彼らに対する羨ましいという感情や、かつての彼女を忘れたいという気持ちから、自分も性に奔放になり、セックス依存症へ進んでいってしまう、という作者の回想シーンは見ていてとても辛かった。
誰もがなり得る病気である「依存症」への知識を身に付けたり、現代社会の問題点を知ることができるということで、この<合本版>以降の内容も含めて、なるべく多くの人が読んだ方がいいと言える漫画だと思います。マンガでわかる系の本にありがちな、漫画パート→活字の繰り返しではなく、漫画を読み進める中で依存症に関する知識に触れられるという内容なのでかなり読みやすいです。
三ヶ月位スリップせずに性依存症治療を続けられると、性への執着が減ってくる。依存症において、スリップ(再行動化)は回復の過程とみなされている。スリップしても絶望してはいけない。例えば、依存症により不安定な状態になったとして、数ヶ月離れて回復してきた頃にスリップしてしまったとしても、その一回の段階では完全に当時と同じくらいに不安定な状態に戻っているわけではない。
トラウマ治療や依存症治療における回復の過程は、直線ではなく螺旋状なのである。